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講演会・セミナー

2016年8月27日(土)
日本パーキンソン病・運動障害疾患学会(MDSJ)
第1回パーキンソン病ナース研修会共催セミナー


司会:村田美穂先生(国立精神・神経医療研究センター病院長)
演者:花島律子先生(北里大学神経内科准教授)
演題:パーキンソン病の治療

パーキンソン病の治療は、大きく分けて一般療法、薬物療法、手術療法の3つに分けられる。一般療法は、リハビリテーションなどにより医師以外の医療関係者による患者さんのサポートが中心で、特にリハビリテーションが重要である。薬物療法は、パーキンソン病の原因であるドパミンの欠乏を薬剤により自然な形で補うことが主眼となる。手術療法は、薬剤の効果が不十分になった場合や、薬剤の副作用のコントロールが困難になった場合に適応される。

●一般療法

一般療法では、バランスの良い食事を勧める指導を行う食事療法、睡眠を十分とる、便通をよくするなど良好な生活習慣の維持を勧める教育指導を行う。また、無動、固縮、振戦、姿勢反射障害などの運動症状が出現するが、これらの症状に対する残存能力の維持や、活動量低下に伴う廃用症候群の予防のために、運動療法、作業療法、言語療法などが行われる。

●薬物療法に用いられる薬剤

薬物療法に用いられる薬剤の種類は多く、レボドパ(L-ドーパ)製剤、ドパミンアゴニスト(ドパミン受容体刺激薬)、ドパミン分解酵素阻害薬、アデノシンA2A受容体拮抗薬、抗コリン薬、ゾニサミド、アマンタジンなどがある。このうちで薬物治療のゴールドスタンダードとされるのがレボドパ製剤である。パーキンソン病の症状は、「脳内の潤滑油」として働く神経伝達物質のドパミンの欠乏により引き起こされるため、レボドパ製剤投与によりドパミンを脳内に自然に近い形で補充して、症状を改善することを目的としている。すなわち、根本治療ではなくドパミン欠乏に対処する治療である。レボドパの主な副作用は、悪心、嘔吐、食欲不振、浮腫、起立性低血圧である。
ドパミンアゴニストは、ドパミン受容体に直接作用してドパミンの不足を補うことで効果を発揮する。作用はレボドパより弱く緩徐に作用するが、効果持続時間はレボドパに比べ長い。ドパミンアゴニストは、麦角系と非麦角系の2つに大別され、麦角系ドパミンアゴニストは心臓弁膜症のリスクを高めることがわが国からも示されており、このリスクは高血圧症のある者や高齢者で高い。非麦角系ドパミンアゴニストでは突発睡眠などの副作用に注意が必要である1)
ドパミン分解酵素阻害薬は、レボドパ製剤の半減期を延ばし、効果持続時間を延長する目的で開発されたカテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害薬と、ドパミンやセロトニンの分解酵素であるモノアミン酸化酵素B(MAO-B)の働きを阻害することによって、脳内のドパミン濃度を上げてパーキンソン病症状を改善するモノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬がある。ドパミン分解酵素阻害薬の主な副作用は、幻覚、妄想、錯乱、狭心症、悪心、眩暈である。
アデノシンA2A受容体拮抗薬は、非ドパミン系の薬剤である。脳内のアデノシンはドパミンと拮抗する作用を持っており、パーキンソン病ではドパミンの減少に伴い相対的にアデノシンが優位な状態となり、運動能力の低下が引き起こされる。アデノシンA2A受容体拮抗薬を投与することで、アデノシンの働きを抑え、ドパミンとアデノシンのバランスを取り戻し、運動機能を改善する。

●薬物療法における薬剤選択と合併症への対応

パーキンソン病では、他の神経内科疾患に比べ使用できる薬剤が豊富である。そこで、病期、年齢、合併症の有無によって薬剤を選択し、また、複数の薬剤を組み合わせて使用し、できる限り長期にわたり患者さんの日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)を良好に維持できるよう工夫する。
病初期で患者さんの生活上の困窮度が低い時期には定期的診察やリハビリテーションなど一般療法を行い、患者さんが生活や仕事に支障を感じるようになったら薬物療法を開始する。ただし、薬物治療の開始をいたずらに遅らせることも避けるべきである。薬剤は、ドパミン補充が主体であるので、レボドパ製剤またはドパミンアゴニストが第一選択となる。70歳以上の高齢者では、ドパミンアゴニスト投与による幻覚、妄想などの精神症状に特に注意が必要であることなどから、レボドパ製剤で開始することが勧められる。若年者ではジスキネジアを生じるリスクが高く、レボドパ製剤の長期投与に伴う運動合併症の発現を回避する点から、ドパミンアゴニストで開始することが勧められる。ただし、若年者でも離職や転倒の恐れがある場合には、レボドパ製剤で開始する。レボドパ製剤やドパミンアゴニストの単剤療法で効果不十分の場合には、これら2剤の併用を考慮するが、若年者ではモノアミン酸化酵素B(MA
O-B)阻害薬の併用も考慮する。
病期が進み進行期に入ると、レボドパ製剤の長期投与に伴う運動合併症や精神症状がみられるようになる。運動合併症では、薬剤の効果が得られる時間(オン)が短くなり効かない時間(オフ)が出てくるウェアリング・オフや、不随意運動であるジスキネジアが出現する。これらの運動合併症は間歇的なドパミン受容体刺激によって起こると考えられており、特にレボドパ製剤の使用で発現率が高いのは、その短い半減期に起因すると考えられている2)。そこで、(1) 緩徐に長く効くドパミンアゴニストを併用して可能ならばレボドパ製剤を減量する、(2) ドパミン分解酵素阻害薬を併用してレボドパ製剤の半減期を延ばす、(3) 早期での3回投与を5回以上投与などにして血中濃度をできる限り一定に保つなどの工夫により合併症を改善する。このような合併症の対応として、最近レボドパとレボドパの効果を延長する作用を持つカルビドパを配合してゲル状にし、胃瘻を介して小腸に持続的に投入する薬剤も開発されている。
精神症状に対しては、睡眠障害には原因の考察や睡眠薬投与、うつ症状にはパーキンソン病の治療と抗うつ薬投与、疲労にはドパミン補充療法、幻覚・妄想にはパーキンソン病治療薬の調節や向精神薬の投与などが行われるが、いずれもエビデンスが少なく治療として確立したものはなく、一般に治療は困難である。

●手術療法

薬物療法の効果が不十分となった場合や上述した薬剤内服の工夫による合併症の改善が困難な場合には、手術療法を考慮する。手術療法は、方法として破壊術と脳深部電気刺激療法(DBS)の2つがあり、脳内の対象部位として視床、淡蒼球内側、視床下核(STN)の3つがある。現在は、DBSによるSTN刺激(STN DBS)が主流となっている。STN DBSの適応は、(1) ウェアリング・オフ、ジスキネジアが出現し、薬剤の内服による工夫が困難な場合、(2) レボドパ製剤の効果が認められる、(3) 高齢ではない、(4) 精神症状が強くない、のいずれをも満たす場合である。手術療法により、ウェアリング・オフ、ジスキネジアの改善が期待できる。

1) 日本神経学会監修、「パーキンソン病治療ガイドライン」作成委員会編集、パーキンソン病治療ガイドライン2011 医学書院
2) 武田篤 編, ガイドラインサポートハンドブック パーキンソン病 医薬ジャーナル社 2011
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