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日本パーキンソン病・運動障害疾患学会(MDSJ) 第2回パーキンソン病ナース研修会共催セミナー

●座長
 野元 正弘 先生(愛媛大学神経内科 教授)

●演者
 斎木 英資 先生(北野病院神経内科 副部長)

●演題
 「パーキンソン病の治療」

パーキンソン病の病態と治療

脳には、大脳基底核神経回路と呼ばれる領域がある。この領域には被殻、淡蒼球外節(GPe)、淡蒼球内節(GPi)、視床、視床下核(STN)、黒質が存在し、複雑なネットワークで相互に結ばれていて、これが動作の発現をコントロールする基本的な仕組みであると考えられている。ネットワークの最も上流に位置するのが黒質のドパミン神経で、パーキンソン病(PD)の病態の根本は、このドパミン神経の変性・脱落によるドパミン産生の減少である。実際、PDを発症した時点で患者のドパミン神経細胞数は4〜6割程度まで減少し、ドパミン量は1〜2割程度に減少しているといわれている1)

このような知見から、欠乏するドパミンを脳内に補充するドパミン補充療法の考え方が生まれた。ところが、ドパミンは血液脳関門(BBB)を通過できないため脳内に移行できず、経口服用されたドパミンは血中で短時間に分解されてしまうためドパミンによる治療は奏効しない。そこで、BBBを通過可能なドパミンの前駆物質であるレボドパによる治療が行われるようになった。近年、多くのPD治療薬が使用可能となり、現在3グループに分けられている。すなわち、ドパミン補充療法に用いられるドパミン前駆物質であるレボドパ、ドパミン受容体に直接結合するドパミンアゴニスト、そしてドパミン欠乏により生じた機能の異常を改善する非ドパミン系薬である。
中には「治癒が期待できないのに薬を飲む必要があるのか」といった疑問を持つ患者もあるが、演者は寿命の延長が期待できること2)および日常生活動作(ADL)の低下を抑制できること3)の2点をあげて薬物治療の必要性を説明している。

パーキンソン病にみられる運動合併症

PDでは患者が困窮する運動合併症が治療開始後5年程度で発現して徐々に増悪するようになり4)、PDの重症化にも関与していると考えられる。運動合併症には、レボドパを1日に3〜4回服用しても、1日のうちに薬剤の効果の切れ目が出るウェアリング・オフ現象や、くねくねとした不随意運動が発現するジスキネジアなどがある。また、運動合併症は生活の質(QOL)を低下させるとともに5)、医療コストを押し上げる6)ことが知られている。これらの運動合併症は、間歇的なドパミン受容体刺激によって起こると考えられており16)、レボドパの用量との関連が示されている7)。また、体重1kgあたりレボドパ4mg以上で、ジスキネジアの発現リスクが高まるという報告がある17)。なお、ヒトの臨床におけるレボドパの神経毒性は、現在ではほぼ否定されている7)

運動合併症への対応

中枢神経系でのドパミン濃度をできるだけ一定にするように工夫することで、運動合併症の予防および治療を目指した持続的ドパミン刺激(CDS)が提唱されている。現在では、CDS実現を目指してレボドパの分解を抑制し効果の延長を図るための薬剤であるモノアミン酸化酵素B(MAOB)阻害薬8)やカテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害薬9)がレボドパと併用される。血中半減期の長いドパミンアゴニストも、運動合併症抑制作用が認められている10)

非薬物療法としては、外科的に脳のSTNに電極を埋め込み、電気刺激を与えて運動合併症を抑制する脳深部刺激療法(DBS)が知られており、運動症状および運動合併症の改善、薬物の減量効果、就労期間の延長などが期待できるようになった11,16)

また、2016年9月より、胃内容物排出遅延に伴う経口レボドパ製剤吸収の不安定化に対処する方法として、ゲル状のレボドパ・カルビドパ水和物を胃瘻を介して専用ポンプで空腸に直接注入するレボドパ/カルビドパ配合経腸療法(デュオドーパ®)が、わが国でも使用可能となった。デュオドーパ®の使用により、日本人進行期PD患者において安定した血漿中レボドパ濃度が得られることが明らかにされた12)。また、1日あたりの平均オフ時間は、ベースラインの7.37時間から投与12週時の2.72時間へと有意に改善した(p<0.001、1標本t検定)13)

細胞移植治療の展望

最近、PD患者の間でiPS細胞移植への期待が高まっている。細胞移植治療研究は、1985年から動物モデルに中絶胎児の脳組織を移植したところPD症状の改善がみられたことから開始され、その後、2001年と2003年に中絶胎児の脳組織を移植する臨床試験が実施された。その結果は、対象患者全体では脳組織移植患者とシャム手術を実施した対照患者の間に差はなく、60歳以下の若年患者や軽症患者、免疫抑制剤投与中の患者でPDの改善が認められるというもので、有効性が示される患者は少数であった14, 15)。また、中絶胎児の脳組織を利用するという倫理的問題もあった。iPS細胞移植ではこのような倫理的問題がなく、また免疫抑制剤が必要でないため、今後の展開が注目される。

●文献
1) 武田篤 : パーキンソン病とはどういう病気か. みんなで学ぶパーキンソン病 第1刷. 南江堂, 東京, 2-5, 2013.
2) Clarke CE. : J Neurol. 257(Suppl 2):S262-267, 2010.
3) Hoehn MM. : Adv Neurol. 45:457-461, 1987.
4) Kempster PA, et al. : Brain. 130(Pt 8):2123-2128, 2007.
5) Damiano AM, et al. : Qual Life Res. 9:87-100, 2000.
6) Dodel RC, et al. Pharmacoeconomics. 14:299-312, 1998.
7) Fahn S, et al. : N Engl J Med. 351:2498-2508, 2004.
8) 「パーキンソン病治療ガイドライン」作成委員会 : 第3章 モノアミン酸化酵素B(MAOB)阻害薬. パーキンソン病治療
 ガイドライン2011. 医学書院, 東京, 27-31, 2011.
9) 「パーキンソン病治療ガイドライン」作成委員会 : 第4章 カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害. パーキンソン病治療
 ガイドライン2011. 医学書院, 東京, 32-34, 2011.
10) 「パーキンソン病治療ガイドライン」作成委員会 : 第2章 ドパミンアゴニスト. パーキンソン病治療ガイドライン2011.
 医学書院, 東京, 5-26, 2011.
11) 水野美邦 : 1. 手術療法. パーキンソン病の診かた,治療の進めかた 初版. 中外医学社, 東京, 143-145, 2012.
12) Othman AA, et al.: Clin Pharmacokinet, 54: 975-984 , 2015.
13) Murata M, et al. NPJ Parkinson’s Dis. 2:16020, 2016.
14) Freed CR, et al. : N Engl J Med. 344:710-719,2001.
15) Olanow CW, et al. : Ann Neurol. 54:403-414, 2003.
16) 武田篤 編, ガイドラインサポートハンドブック パーキンソン病 医薬ジャーナル社
17) Olanow CW, et al. Mov Disord 2013; 28: 1064-1071
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