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第34回 日本神経治療学会総会 ランチョンセミナー

「進行期パーキンソン病治療の課題と新たな選択肢」

●座長
宇川 義一 先生
福島県立医科大学・神経内科学講座 教授
●演者
服部 信孝 先生
順天堂大学医学部神経学講座 教授

パーキンソン病について―原因、症状、疫学

現代のパーキンソン病(PD)の診断基準は無動が中心である。無動があり、なおかつ振戦か筋固縮がある場合にPDと判断する。姿勢反射障害はむしろ他のパーキンソン症候群で早期にみられる症状である。
PDに対するドパミン療法は、1958年にCarlssonら1)によるドパミン欠乏の発見に続き、1961年にHornykiewiczら2)による少量のレボドパ静注による症状改善が観察されたが、その後少量投与での効果に否定的な報告が続いた。1967年にCotziasら3)によりレボドパ大量投与による劇的改善が報告され、レボドパ治療の幕開けとなった。ただし、PDでは症状の進行に伴い「有効治療域の狭小化」がみられるため、半減期の短い経口レボドパ治療ではしばしばウェアリング・オフ現象やジスキネジアなどの運動合併症が問題となる。
PDでは非運動症状の一部が運動症状発現以前からみられるが、嗅覚低下、日中過睡眠、便秘、反応時間の低下、遂行機能障害のうち3つを超える症状がみられるとPDの人口1万人あたり発症率は215人となる。一方、症状が2つでは29人、1つでは28人、なしでは16人となることから4)、これらの症状の有無を組み合わせることによる診断価値は高いと考えられる。また、レム睡眠行動障害(RBD)のPD予測因子としての評価は感度93.8%、特異度87.2%と報告されている5)
PD患者では腸管の迷走神経が障害されることが明らかにされている。またPD患者ではアミロイド・ベータ(Aβ)が、マイネルト基底核から扁桃体を経て大脳皮質へと上行し認知症をきたすといわれているが6)、その上行が腸管から始まるか否かについては評価の分かれるところである。α-シヌクレインとPDの病理については明らかにされていないが、α-シヌクレインが異なる個体の神経細胞に伝播することが明らかになった7, 8)。この知見は、α-シヌクレインがプリオン蛋白と同様に神経細胞から神経細胞に伝播する可能性を示唆している。また、PD発症前の患者から切除された大腸ポリープの神経細胞に、α-シヌクレインが蓄積していることも明らかにされている9)

進行期パーキンソン病の治療と課題

近年、PDの薬物治療では多くの薬剤が使用可能となり、予後の改善に寄与している。しかしながら、患者のQOL・ADLを大きく低下させるウェアリング・オフ現象やジスキネジアなどの運動合併症に対する治療効果は、残念ながらまだ十分とはいえない状況である。
薬物療法で効果不十分な患者に対しては、非薬物療法である脳深部刺激療法(DBS)が考慮される。DBSは適切な患者を選び適切な処置ができれば、淡蒼球(GPi)DBSではジスキネジアの改善、視床下核(STN)DBSでは薬物の減量が図れ、薬物治療によるハネムーン期を過ぎた患者に対して第二ハネムーン期をもたらすことも期待できる。ただし、高齢患者、認知機能低下患者、精神症状を有する患者などはDBSの適応を持たないため、第二ハネムーン期を享受できる患者は多くない。そこで、新たな治療法に期待がかかる。

新しい治療法デュオドーパ®への期待と注意点

進行期PDでは有効治療域の狭小化と胃内容物排出遅延に伴う空腸からのレボドパ製剤吸収の不安定化が大きな課題となっているが、その解決方法の1つとして開発された新しい治療法が、レボドパ・カルビドパ水和物を直接空腸に注入するデュオドーパ®である。デュオドーパ®は、ゲル状に調製したレボドパ・カルビドパ水和物を経胃瘻的に専用ポンプで空腸に注入するシステムを採っている。デュオドー
®の開始にあたっては、まずレボドパ・カルビドパ水和物の経口投与、次いで経鼻チューブを介したレボドパ・カルビドパ水和物の空腸注入を行い、安全性や投与量を確認した後に胃瘻造設を行うというステップを踏む。
デュオドーパ®の国内第Ⅱ相臨床試験では10)、経口レボドパ製剤と比べデュオドーパ®では安定した血中濃度が期待できることが示された。デュオドーパ®の有効性と安全性を検証したアジア国際共同第Ⅲ相臨床試験では11)、既存のパーキンソン病治療薬で十分な効果が得られない日本人、台湾人、韓国人のPD患者31例を対象として、経胃瘻的にレボドパ・カルビドパ水和物を1日16時間、12週間投与した。
本試験の主要評価項目は、1日あたりのオフ時間、副次評価項目は1日あたりのオン時間などである。その結果、オフ時間はベースラインの7.37時間から投与12週時の2.72時間に有意に減少した(p<0.001、1標本t検定)。日常生活に支障をきたすジスキネジアのあるオン時間は、1.12時間から0.12時間に有意に減少する一方(p<0.032、1標本t検定)、日常生活に支障をきたすジスキネジアのないオン時間は、7.52時間から13.10時間に有意に増加した(p<0.001、1標本t検定)。さらに本第V相臨床試験の延長試験では、12ヵ月以上の最終評価時にオフ時間が7.40時間から3.12時間に有意に減少し(p<0.001、1標本t検定)、投与52〜64週時おけるオフ時間およびオン時間の改善は持続していた。
アジア国際共同第Ⅲ相臨床試験でみられたデュオドーパ®の有害事象のほとんどは、機器に関連したものであった。薬剤の有害事象については、ほぼ既存のレボドパ・カルビドパ製剤と同様であった。また、胃瘻造設関連の有害事象として術後疼痛、切開部痛、胃腸障害などがみられたため、消化器内科医、消化器外科医と緊密に連携する必要があることが明らかとなった。

海外でのデュオドーパ®の臨床経験とわが国での使い方

デュオドーパ®は海外では2004年からスウェーデンで承認され、10年以上の臨床経験がある。そこでデュオドーパ®の海外での位置づけとわが国での使い方について考察する。わが国と同様に海外でも進行期のPDの治療は大きな課題であり、既存治療法のアンメットニーズとして、レボドパ血中濃度の不安定化や胃内容物排出遅延、病期の進行に伴う運動症状の悪化、精神症状の出現、介護負担の増大(負担軽減にはHoehn & Yahr重症度分類W度からV度への改善が重要)、進行期治療の費用増大などがあげられ、デュオドーパ®またはDBSが適応を持つと考えられている。ただし、海外でのDBSの適応年齢は70歳未満である点や、抑うつ、不安、認知症の合併患者では配慮が必要になる点などDBSには適応の制限があることも事実である。 わが国でのデュオドーパ®の適応は、「レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないPDの症状の日内変動(wearing-off現象)の改善」であるが、デュオドーパ®はDBSに比べ年齢層、精神症状ともにある程度幅広いと考えられるので、患者による機器の操作に支障がなければ、DBSの適応が困難とみられる患者でも、使用を考慮してよいのではないだろうか。なお、海外ではDBS施行後の患者にデュオドーパ®を勧める見解も存在するが、わが国では患者の状況に合わせてこれら2つの治療法を使い分けることが勧められる。デュオドーパ®と脳深部刺激療法のデバイス装着治療の幕明けとも言える。

●文献
1) Carlsson A, et al. Science. 127:471, 1958.
2) Birkmayer W, Hornykiewicz O. Wien Klin Wochenschr. 73:787-788, 1961.
3) Cotzias GC, et al. N Engl J Med. 276:374-379, 1967.
4) Ross GW, et al. Parkinsonism Relat Disord. Suppl 1:S199-202, 2012.
5) Postuma RB, et al. Mov Disord. 27:913-916, 2012.
6) Braak H, et al. Neurobiol Aging. 24:197-211, 2003.
7) Desplats P, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 106:13010-13015, 2009.
8) Olnow CW, Prusiner SB. Proc Natl Acad Sci U S A. 106:12571-12572, 2009.
9) Shannon KM, et al. Mov Disord. 27:709-715, 2012.
10) Othman AA, et al. Clin Pharmacokinet. 54: 975-984, 2015.
11) Murata M, et al. NPJ Parkinson’s Dis. 2:16020, 2016.
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